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「物」より「想い出」

以前、こんなお客様がいらっしゃいました。

弊社のすぐ近くの公社のマンションを賃貸で借りているお客様です。
70㎡の3LDKにご家族5人で住んでいらっしゃいました。お子様がもう
すぐ高校受験を迎えるのを機にマンションの購入を考え始めたとい
うのです。

70㎡で3LDKですので決して狭いわけではありませんが、とにかくこ
のお宅は物が多いのです。どこを見渡してとても集中して勉強でき
るようなスペースはありません。なるほど受験を機にマンションを
購入したくなるのもムリもないという状態でした。

購入する物件はズバリ、同じマンション内の4LDK、95㎡以上あるタ
イプの部屋です。

理由は下のお子様の関係で現在の学区だけは絶対に変えられないか
らです。学区を変えずに今より広い部屋となると同じマンション内
の4LDKタイプしか物件は存在しません。

ただこの4LDKは戸数が少なく300戸程度のマンションでも10戸しかあ
りません。その為、築15年以上経つマンションですが4LDKの部屋が
出るとすぐ同じマンション内で買い替えが成立してしまうのです。

事前に資金計画や購入までの流れなど何度も相談し、問題はすべて
クリアしておきました。ただ物件はそう簡単には出てきません。

初めてご相談にいらしてから半年が過ぎたころでしょうか、4LDKに
おまいのお客様から売却の相談が入ったのです。

新築の一戸建てを購入するので売りたいという相談でした。
すぐに査定。はじめは査定額に不満だった売主さんでしたがすぐに
購入してくれるお客様がいますよとお伝えすると時間を掛けるのは
いやだからという理由で納得していただけました。

翌日、以前から何度も相談にいらしていたあのお客様に連絡。その
日のうちに部屋を見ていただくことになりました。

4LDKのお部屋は整然としており、高そうな家具が並んだ素敵な部屋
でした。案内した担当者もこれならすぐに契約と思ったのですが、
買主さんだけがテンションが低いのです。

つい先日まであれだけ熱心に4LDKはないですか、もうすぐ受験なん
で早く買いたいんですけど... そうおっしゃってた買主さんが無口
になっているのです。

案内が終わり、いかがですかと担当者が尋ねると、正面の家が気に
なるというのです。

今住んでいる部屋は4階で正面には何もないけれど今回の部屋は3階
だから前の家の屋根が気になるというのです。

気になるといってもベランダからは10m以上もはなれた一戸建ての
屋根の一部です。日当たりが著しく損なわれるというものではあり
ません。でも本人曰く、気になるというのです。

最終的にはそれが理由でこの部屋は購入しないということになった
のですが果たしてそれは正しい選択だったのか...

もともとの動機はとにかく狭い今の住まいから脱出すること。そし
て受験生の息子に落ち着いて勉強できる部屋をつくってあげること
でした。

それが最終的にはその目的よりは自分の理想に合致するマンション
を購入することにすりかわってしまったのです。

それはまさに家を物として考えるか、生活する場、体験する時間と
して考えるかの違いかもしれません。

最近の傾向としては家を物として考えている方が多いような気がし
ます。不安定な世の中だから少しでも安定している物を求めている
からでしょうか。

このお客様の場合は家を物として考えた結果、未だに3LDKのマンシ
ョンで家賃を払いながら狭い、狭いと言って生活していらっしゃい
ます。

狭い場所で毎日文句いいながら生活する10年と、広い場所で優雅に
暮らす10年。将来的には少しは損をすることもあるかもしれません
が、お金では買えない貴重な経験があるかもしれません。

「物より想い出」という車のコマーシャルありますが、家こそ正に
「物より想い出」です。

さて、あなたはどう考えますか...。